【このブログの概要】「その英語ゲームは、今すぐ日本語で遊べる」
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Spiderweb software inc.(以下SW社)の『Avernumシリーズ』『Avadonシリーズ』をPCOTで遊ぶ際、OCRの誤読防止にフォントを入れ替える提案を、前々回の記事で書いた。
そこでは、最近作である『Queen's Wish: The Conqueror(以下QW)』や『Geneforge 1 - Mutagen』では、行間が広くなって誤読は起きにくいから、フォント入れ替えはたぶん必要ない---と、テキトーなことを言った。だが、ごくまれではあるが、誤読がおきることが、今回確認できた(詳細後述)。
というわけで、あわてて『QW』用のフォントをお送りする。
-目次-
〈Queen's Wish: The Conqueror用フォント画像〉
【概要】 *1
SW社のRPGは、日本語翻訳支援ソフト『PCOT』と非常に相性が良いが、文章の行間が狭いため、前後の行の文字と文字が重なって、OCR読取りがうまくいかないことがある。 *2
ただ使われるフォントはむき出しのpng画像一枚に収められているので、手をいれるのは容易である(詳細は前々回の記事を参照)。
『QW』は、もともと行間がそれほど狭くないから、最低限の改造で誤読防止が可能である。改造済みのフォント画像も見本として掲載する。
【Queen's Wish用改造フォント画像】
- 上の画像を右クリックし、ダウンロードして、G290.pngにリネーム。
- ゲームがあるフォルダの中の「Queen's Wish Graphics Core」フォルダ内のオリジナルのG290.pngをバックアップした上、先程ダウンした画像をそこにコピー。
(Queen's Wish The Conqueror\Queen's Wish Files\Queen's Wish Graphics Core)*3 - ゲームを起動してフォントが表示できることを確認。
〈どうフォントを変更したか〉
はい、ここからは読まなくても大して困らない、くどくどした説明です。
【QWの行間問題】
SW社のゲームが抱える「行間狭すぎ問題」については、前の記事を参照していただきたいが、最近作では行間が広がったように見え、問題ないと思っていた。
ところが、先日、SW社の新作情報として『Queen's Wish2』の情報がTwitterに流れたのをきっかけに、「本当に行間問題は解決してるのか」が、なんとなく心配になってきた。
僕は『QW』を、2021年に40時間ほどやったのだが、実はその際、深刻な行間問題が発生したことがあった。これはPCOTのバージョンアップの過程で、行判定が厳しくなったため(?)ある時、突然生じたようなのだが、さらなる改良で問題は解消した。
だが、少し時間が開いてしまったので、今回もう一度検証してみる。
確かに『Avernum』や『Avadon』に比べ、より行間はあいているようで、ほとんどの場合特に問題はおきなかった。しかしやはり「p」や「y」などの下に大きくはみ出る文字が、次の行の大文字や、上に突き出る「l」や「f」「h」などに重なりそうになる場面がまれにあった。少し不安だったが、たとえくっついているように見えても、ほとんどはOCRが問題なく読み取っていた。
ところが、ジャーナル画面のクエスト内容を翻訳しているときに、以下の画像のような現象がおきた。
明らかに最初の段落の英単語の読み取りが、行単位でぐちゃぐちゃに入り混じってしまっている。もちろん翻訳も意味不明になっている。
これは、一行目のchargeの「g」と次の行のtheの「h」が重なっているためか、あるいは二行目のexpandの「p」と次の行のtheseの「h」が重なっているため(それとも両方の相乗効果?)、行判断を間違えて、誤読が連鎖したと思われる。
『QW』では多くの場合、こういうことがあっても(gやpやyは頻出する文字だ)、大抵うまく読み取ってくれるのだが、ごくまれにこうした誤読が出てしまうようだ。
たまにだから気にせず、訂正しながら進めるのもありだが(DeepLの英文を修正するとリアルタイムで翻訳も訂正してくれる)、あらかじめフォントをいじって、誤読が防げるならそれに越したことはないだろう。
ちなみに一行目のクエストタイトルが「エライ人」になっているのは、タイトル部分に「特殊フォント」が使われているため、「Clive's」の大文字「C」を「e」と読み間違えているからだ。これはまあ、この文字を見れば十分想定できるので、笑ってすませたいところ(詳細後述)。
【最小限のフォント改造】
『Avernumシリーズ』や『Avadonシリーズ』では、全フォントを上下に潰したり、「g」や「y」を上にずらしたりと、かなり荒っぽい改造を行った。元の英文がでこぼこしてあまり美しく見えないほどで、ちょっと反省している。
だが、もともと問題が少ない『QW』では、あまりオリジンフォントの雰囲気を変えずに、最小限の改造で済ませられそうである。 *4
そこで、他より下側に出っ張っている小文字の「g」「j」「p」「q」「y」大文字の「J」「Q」などについて、途中の1ドットぶんを抜いて「下へのはみ出方を短く」したり、縦に(1ドット分だけ)縮小したりした。
わずか1ドット分だが、これによって、下の行に文字が干渉することがほぼなくなったと思う。
文字をずらしたりはしていないので、よほど目を凝らさない限り、フォントをいじったことには気が付かないだろう。
あとは、ダブルクォーテーション「”」の間を縮めたり、位置を1ドット分下にずらすなど、誤読リスクを減らす方向で、少々いじったぐらいである。
こうして改造したフォントで、先の、問題が出た文章を読んだのが次の画像である。
ほとんど違ってないように見えるが、わずかにgやpの下側と次の行の文字にスペースがあいて、問題なく読み取り、訳されるようになった。
もし、これでも足りないようなら、さらに文字をずらすなど手をいれることもできるだろう。
PCOTの作者ぬるっぽ氏による『SWFR』という、SW社のゲームフォント専用改造ツールもあるので、納得するまでいじることができる。
【特殊フォントについて】
SW社のゲームは、通常フォント(フォント画像6行目まで)と、特殊フォント(俗称おしゃれフォント)で構成されている。通常フォントはほぼ全ゲーム共通で、特殊フォントはシリーズ毎に、別のデザインが採用されている。『Avadon』ではあまりにクセが強すぎて、フォントをかなり改造しなければ、うまくOCRが読んでくれなかった。
だが『QW』では、特殊フォントには手を加えていない。
もともと、何行にも渡る箇所には使われていないのと(そもそも盛大に下方にはみ出している文字がない)、読取りにくいほどのクセのある文字ではないからである。読取りに失敗することはあまりない。
ただし、大文字の「C」がどう見ても小文字の「e」に見えるし、実際OCRもそう読んでしまうが、まあ、そういうもんだと思ってスルーしても特に実害はないだろう。大事な部分には、特殊フォントはあまり使われないし。
どうしても気になるなら、フォント画像を画像編集アプリなどでいじるといい(eに見せている、くるっと巻いた飾り部分を削ればいいだけ)。
【テキストウィンドウの壁紙問題はなし】
『Avadon2』などに顕著だったテキストウィンドウのバックの壁紙模様が誤読を誘発する問題(これについては、前回の記事を参照)だが、『QW』はあまり陰影がなく心配いらないと思われる。『Geneforge』も大丈夫なようだ。
【クイーンズウィッシュ2】
上でも触れたように、先日(2022年4月3日)『Queen's Wish2 :The Tormentor 』の予告がtweetされた。おそらく数ヶ月以内に発売されるだろう。
SW社の作品は、シリーズ毎に、ほぼ共通のシステムだから、おそらく今回のフォントがそのまま使えると思うが、各自ご確認いただきたい。
SW社のRPGは各シリーズごとに、明らかに異なるゲームテーマを持っている。『Queen's Wish: The Conqueror』は、植民地各国の政治的な調停、資源の生産と確保、施設の拡大、人民の信頼度のアップなどを盛り込んだ「4X系ストラテジー」の香りが強い。
グラフィック面では、これまでのSW社標準のマップチップをそっくり入れ替え、細かなシステムも一新されている。地面に散らばった、ガラクタを含めた様々なアイテムを「g」キーで拾ったり拾わなかったりする、あの感覚がなくなったのはちょっと寂しい。
正直、RPGにストラテジーを足したゲームは面倒で(←また出た)、冒険に集中できないためちょっと苦手。昨年話題になったOwlcat Games社の『Pathfinder : Wrath of the Righteous』(もちろんこれもPCOTで快適に遊べる)も、二章目から兵士雇用をしながらいくつも大軍団を進行させる(まだスタークラフト社があるころの『キングスバウンティ』や、『Heroes of M&M』みたいな)ストラテジーが加わって来て、途中で停まってしまった。昔の『キングスバウンティ』自体は、大好きだったんだけど、普通のパーティ制RPGに足されると、気が散るのだ。じじいは集中力がもたん。
とはいえ、『QW』はそれほど複雑なわけではないから、あまり臆する必要もない。帝国を築いていくゲームに興味があるなら、とても楽しい味付けになっているはず。『2』では何をやってくれるのか、楽しみだ。
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【『Geneforge 1 - Mutagen』のフォント】
さて、2022年4月現在、最新作といえる『ジェネフォージ(リメイク版)』だが、実は最初のチュートリアルしかしていないため、あまり詳しく言えない。このゲーム、最初はNPCを見かけなくて、会話も少ないのだ。
オープニング画面から行ける「Instruction」(プレイマニュアル)は長文が多いから、チェックするのにはいい。正直、行間問題でひっかかるところは、ほぼ見当たらない。
僕の観察したところ、QWと同じ行間という気がする(曖昧)。yやgがギリギリ次の行に接触しているようにも見えるが、QWと同じく、誤読を起こすことはほとんどないようだ。
まれに行間の文字接触が、同じ文章内で複数おきると、誤読がおきるのかもしれない・・・。 *5
特殊フォントについては、このシリーズ特有のものがオープニングでもゲーム内でも、ちょろちょろと出てくるが、読み取りやすいようで、深刻な誤読はないと思われる。
[2022.04.24 追記 ]
結局、念のため『Geneforge1』のフォントも変更した。『QW』の改造済み通常フォントを移植し、特殊フォントの「A」を少しいじった。詳しくはこちらを。
おまけ:特殊フォントの「C」にも手を加えたG290.png
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-脚注-
*1:前回と同様、ここでは『PCOT』や『DeepL』『Spiderweb Software Inc.』『OCR』『Steam』『GOG』『日本語翻訳しながら遊ぶ海外ゲーム』などについて、ある程度知り、使っていることを前提に話を進めていく。
*2:『行間狭すぎ問題』とは:Spiderweb Softwareのゲームは、最近作を除き、「行間狭すぎ問題」が発生することがある。フォント自体はトラディショナルで、OCR読み取りに問題がないのだが、行間が狭すぎるため、何行にも渡る長い英文の場合、前後の行の文字がつながって重なり、誤読されることがまれにあるのだ。具体的には小文字のg,j,p,q,yなどの標準よりかなり下にはみ出している文字と、上に背の高い文字(小文字のb,d,f,h,i,j,k,lや大文字全般、記号!,?など)の一部が重なることがある。それを何らかの大きな一文字と誤読し、おかしなところで行替えが行われて、単語の順がメチャクチャに読み取られてしまう。結果、意味不明な文字化け翻訳文章が現出することがあるのだ。これが起きないように、フォントファイル(PNG画像)をいじって、行間が狭くても、重なりが起きないように改造するのが「誤読防止改造フォント」の骨子である。
*3:steamやGOGのゲームフォルダは結構階層の深いところにある。各人の環境によって異なるが、僕の場合は・・・・
GOGは I:\Program Files (x86)\GOG Galaxy\Games\Queen's Wish The Conqueror\Queen's Wish Files\Queen's Wish Graphics Core
Steam版は持ってないが、もし入ってたらおそらく、I:\Program Files (x86)\Steam\steamapps\common\Queen's Wish The Conqueror\Queen's Wish Files\Queen's Wish Graphics Core
*4:このゲームでは小さいフォントがほとんど使用されてないので、余計に読み取りに不安がない。一応小さい文字にも手をいれてあるが。
*5:気になるなら『QW』と同じような加工を施すのもありだろう。たぶんQWの通常フォントと共通なので、改造済みQWの通常フォント部分をそのまんまコピペしてもいけると思う。ズレのないように注意。